稲荷と観音に傾いた母の大成村事件
どんな伝承か
昭和三十年代の新聞をたどると、信仰が人の命を奪った事件がいくつも見つかる。北海道久遠郡の大成村では、昭和三十三年八月、稲荷と観音を奉じる町の宗教に深く傾いた母親が、夫と自分の母の二人を手にかけた。その衝撃から母子五人が正気を失ったと伝えられる。同じ年には、四日市で人工栄養は神の怒りに触れるとして乳児を栄養失調で死なせた例や、大阪の女祈禱師が神託と称して農薬を信者の口に注いだ事件も起きている。著者はこれらをまとめて殺人教と呼び、報じられぬまま病死として葬られた例も多いはずだと書いた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
講座日本風俗史別巻 妖異風俗((講座日本風俗史 別巻)・日本風俗史・民俗)
『講座日本風俗史別巻 妖異風俗』は、『講座日本風俗史』の別巻として、複数の執筆者が妖しく異様な風俗を論じた巻である。淫祠と性の祭礼、戦後の新興宗教、性にまつわる迷信、妖術・忍術・奇術、憑きものと特殊家系、心霊術と催眠術、異類との婚姻、性と怪異の関わりを、古典の随筆や各地の報告、事件の記録から取り上げる。九つの章に分け、終章「日本妖異風土記」では関東から九州・沖縄までの怪異譚を地方別・県別に掲げる。