お不動淵から続くキツネ火の行列
どんな伝承か
笹井に住むおばあさんが孫娘を連れ、川向こうの扇町屋へ買い物に出かけた帰りのこと。日が暮れて渡し舟で笹井の岸に着くと、小雨が降り、提灯なしでは歩けないほどの闇だった。二人が入間川沿いに家路を急いでいると、川べりに赤い火がぽつぽつと灯りはじめ、みるみる数を増して長い行列となり、お不動淵から対岸の黒須のほうへ連なった。孫娘は怖がって震えたが、おばあさんはキツネの嫁入りだから悪さはしない、じっと見ていろと落ち着いていた。やがて火の列はふわふわと進み、根岸のほうの根っこ稲荷のあたりで一斉に消えた。キツネ火を見ているときは足もとに必ずキツネがいるので、動いたり騒いだりしてはならないと言い伝えられている。
原典より
昔、下奥富の五反田あたりに「しば」という山があり(山といっても木が生い茂っているだけのところ)キツネがすんでいて、よくキツネの嫁入りが見られた。—— 狭山市史 民俗編(狭山市(狭山市史編さん室/民俗調査担当)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
狭山市史 民俗編(狭山市(狭山市史編さん室/民俗調査担当))
『狭山市史 民俗編』は、狭山市の市史のうち民俗を扱う巻で、ここにはその「五 伝説・昔話・世間話」の部分が収められている。堀兼・入間・奥富・柏原・水富・入間川の各地区で古老の座談会と個別の聞き取りによって集めた話を、話者の地区・名・生年を添えて載せ、不老川や堀兼の井、影隠地蔵、キツネ、豪商綿貫家の話などを含む。伝説は水・動物・植物・地名・人物・塚・神仏・地蔵・妖怪変化など十項に分け、話ごとに[解説]を付す。