親を迷わせたキツネとキツネ火
どんな伝承か
棡原の井戸では、キツネの仕業とされる出来事がいくつも語られていた。夜遅くまで隠れんぼをしている子を親が探しに出て名を呼ぶと、はるか下の方から細い返事がある。下りて呼べば今度は高い所から答える。そうして夜が明けてみると、子はすぐ脇にいて、自分はずっとここにいたと言う。化かされていたのは探し歩いた親の方だった。魚を提げて夜道を行けばキツネが欲しがって道を誤らせるとも言い、山の上や藪の中に灯りが一列に並んで点いたり消えたりするのを見た者は、それをキツネの嫁入りだと語った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
井戸の民俗――山梨県北都留郡上野原町棡原(民俗調査報告 第6号・民俗調査報告)
『井戸の民俗――山梨県北都留郡上野原町棡原』は、棡原の井戸地区で行った民俗調査の報告で、書名によれば民俗調査報告の第六号にあたる。この写しには、長泉寺・観昌寺を『甲斐国誌』や『北都留郡誌』などの記録でたどる寺院の項と、クモ・夢見・イエギツネ・キツネ火などの俗信、民間療法を収める。口承文芸の章では、狼報恩などの昔話、親鸞上人の伝説、笑い話・なぞ・わらべうたを話者の名と生年を添えて掲げ、昔話と伝説には解説を付す。