一夜の橋を諦めた笠形山の天邪鬼
どんな伝承か
市川町の根寄野という部落の東に、播磨富士と呼ばれる標高九百三十六メートルの笠形山がそびえる。頂の姿が笠に似ることからその名がついた。山頂から北へ二、三十メートル下った所には、高さも周囲も七メートルほどの大岩が立ち、村人はこれを笠形の挽石と呼んでいる。大昔、この山に住んでいた天の邪鬼が山の主になろうと山の神に力比べを申し出て、一晩で多可の妙見山まで石の橋を架けてみせると言い出した。あちこちから石を挽き集め、最初の橋のつかを立てた所で一番鶏が鳴き、東の空が白みはじめたので、天の邪鬼は何も言わずに姿を消したという。残された橋のつかがこの大岩で、付近から出る板石はてっぺい石と呼ばれた。
原典より
〈高木―「岩の掛橋」 柳田―「鬼石」〉根寄野という部落の東に、播磨富士とよばれている高さ九百三十六メートルの山があります。—— 日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第8巻』は、黄地百合子・酒向伸行・田中久夫が滋賀・京都・兵庫の三府県を分担して執筆し、福田晃がまとめた伝説集である。丹波の湖を神々が切り開いた国造りの話、神同士の争い、英雄や長者の盛衰、蛇と人の話、魚・鳥・石・塚・祠堂の由来などを、各地の口承や記載資料から集める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、高木敏雄・柳田国男の対応する話名を付す。