弘瀬に流れ着いた鴨姫
どんな伝承か
宿毛市の沖ノ島、弘瀬の浦に一艘の控舟が流れ着いた。漁師たちが引き寄せると、舟底に美しい若い女が一人でうち伏して泣いており、自分は尊い身分の家の姫に生まれたが世に嫌われる病にかかってこのように流されて来た、どうか助けてくれと頼んだ。漁師たちは哀れんで助け上げたが、土地の年寄が後の迷惑を案じて止めたので、一同は泣き叫ぶ姫を再び舟に乗せ、沖へ押し流した。その時、一羽の鴨が飛び降りて舟の舳に止まったまま、黒潮とともに流れて行った。幾日か経って漁師の網に姫の遺骸がかかったので、ねんごろに葬ったが、村に不思議が続くので神社に祀った。これが鴨姫さまで、今も村の女たちがよく詣るという。
原典より
<柳田―「姫崎」>昔、弘瀬の浦に、一艘の控舟が流れ着いて、土地の漁師どもが引き寄せてみると、舟底にみめ美しい若い女がたった一人で心細げにうち伏して泣いていて、自分はある尊い身分の家の姫に生まれたが、世間に嫌われる病気にか…—— 日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第12巻』は、四国四県(香川・愛媛・徳島・高知)の伝説を話型ごとに集めた伝説集成の一巻である。神々の争いや大人の足跡、弘法大師の彫り残しや麦の種、英雄の誕生、長者、人柱、蛇聟、狼の報恩、化猫退治、首切れ馬、夜泣石、地蔵の霊験などを、町村誌や地方の伝説集、昭和五十三年度立命館大学説話文学研究会の採集調査稿から採る。百三十九話に通し番号を付け、各話に伝承地と出典、高木・柳田の分類名を添え、県別の〔類話〕と〔文献〕を続ける。