子守唄が聞こえる桜渕と夜泣き地蔵
どんな伝承か
所沢市山口の堀の内にある桜ヶ渕の話。昔、子守が子を背負ったままこの渕で死んでから、毎夜「ねんねんよう」という悲しげな子守唄が聞こえるようになった。村人は地蔵を祀って冥福を祈り、この地蔵は子供の夜泣きを止めてくれるという。『所沢市史』によれば、およそ二百年前、山口の町谷にかねぜんという紺屋があり、十二、三人の職人を抱えて手広く商っていた。この家に生まれた男の子が夜中に激しく泣くので、子守が外へ出てあやすうち、誤って桜渕に落としてしまった。子守は嬰児の後を追って渕に身を投げ、それからは赤子の泣き声とともに子守唄が渕から聞こえるようになったという。
原典より
昔、子守が子を背おったままこの渕で死んでから、毎夜「ねんねんよう、ねんねんよう」という悲しそうな子守唄がきこえて来る。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。