竹やぶに現れて消えた巨大なナバ
どんな伝承か
熊本県玉名市石貫での話。一番上の姉は明治四五年生まれで綱といい、数えで八つほど、小学校に入った年のこと。雨上がりの夕方、上の屋敷へ行くと、三歳ほどの三番目の姉つじがちょこちょことついていった。すると夏みかんの畑の向こう、竹藪の間に、パラソルほどもある巨大なナバ(きのこ)があったという。驚いた綱は妹をそこに待たせて家へ引き返し、すぐ下の妹を呼んできたが、二人で戻るとナバは影も形もなかった。つじは「それはねえ、ほんとにあったのよ」と言い張った。その上は孟宗竹の藪で狸が棲んでおり、狸に化かされたのではないかという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。