八王子坂で重くなった自転車
どんな伝承か
二十年ほど前の秋の夕暮れどき、小久保喜一がサンマを荷台にくくりつけて自転車を走らせ、亀ヶ入沼のわきの八王子坂を通りかかった。下り坂のはずが、自転車がにわかに重くなる。降りて調べても変わったところはなく、力いっぱいペダルを踏み込んでどうにか坂を下った。妹の家に着いてから見直しても何ともなく、帰り道には元どおり軽く走った。荷台のサンマを狙った狐か何かが、喜一を惑わそうとしたのだろうという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
滑川村史 民俗編(滑川村史)
『滑川村史 民俗編』は、埼玉県比企郡滑川村(今の滑川町)の村史の民俗編から、伝説と噂話の節を抜き出したものである。盗まれるのを拒んだ阿弥陀、生首八幡、福田鉱泉の始まり、河童の証文などの伝説と、オトウカ(狐)やムジナに化かされた話、三峯のオオカミ様、人魂や火柱などの噂話を、話者の地区とともに短い条で収める。沼と小高い山の多い村の、村人の身近な不思議の語りが中心である。