流れ仏を見て飢える波津のナエガツク
どんな伝承か
福岡県遠賀郡の岡垣村波津には、ナエガツクという言葉が残っている。海に漂う死体をナガレボトケと呼ぶが、それを見てしまった男が、帰り道から急にこらえがたいほど空腹になることをいう。家へ戻って五人分もの飯を平らげた男がいたと語り継がれている。海で死んだ者にまつわる呼び名は土地ごとに違い、水死体の上がらないものをフウライミサキ、見殺しにされた難船者の恨みが海上に燃える怪火をマヨイボトケと呼ぶ土地もある。ナエガツクもその仲間のひとつに数えられている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。