帯を引きずる音と仏壇の鐘
どんな伝承か
青森県下北郡大畑町小目名で、昭和十六、七年のことである。夜中にふと気がつくと、紐でも付けて戸を引っ張るように、カラカラッ、カラカラッと音がしていた。普通の客なら声をかけて表戸を開けるのに、まるで違う音だったので起きてみると、今度は畳の上を帯でも引きずるようにスルスルッと鳴った。はてなと思ったとき、奥の仏壇の鐘がカンカンカンと三度鳴り、体中がぞくぞくした。今来たのはじいさんだと分かった。やがてまた帯を引きずる音がして、団扇で地面をあおぐような足音が、下の墓の方角へ遠のいていったという。お盆の最中の出来事であった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。