夫の霊が妻に語った身の振り方
どんな伝承か
恐山の大祭には三十人ほどのイタコが集まっていた。数珠を鳴らして唱えごとを始めた一人が、三十がらみの男で体の半分がつぶれている仏だと告げると、そばにいた女がうなずいた。やがて口調が男に変わり、数か月前に交通事故で急死したという夫が、残された妻の身の振り方や家族の行く末を細かく語り出す。女は涙をこらえて聞き入り、声が遠のく間際に父さんと呼びかけてその場に泣き伏した。著者があとで確かめると、語られた内容はいずれも当たっていたという。聞き返された老婆は、自分が喋っているのではないから分からない、もう一度霊を招ばねばと答えた。
原典より
私がちょうど、その恐山に出かけて行ったとき、現在は数少ないが、約三十人くらいのイタコがいた。—— 霊魂の謎-新版タナトロギー入門(中岡俊哉・1990年(平成2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊魂の謎-新版タナトロギー入門(中岡俊哉・1990年(平成2年))
『霊魂の謎-新版タナトロギー入門』は、中岡俊哉が昭和四十八年刊の『タナトロギー入門』を大幅に書き改め、一九九〇年に文庫として著し直した心霊研究の本である。著者自身の霊体験から説き起こし、背後霊・地縛霊・騒霊・悪霊・淫霊などの事例、臨死体験と転生、死者の声の録音や自動書記、恐山のイタコ、心霊治療、心霊写真の鑑定を国内外の例で述べる。全五章を小見出しで細かく区切り、まえがきでは「七疑三信」という著者の調査の立場を語っている。