霧島の山中の桃林と仙女
どんな伝承か
霧島山の大隅側にある西霧島の大社に仕える寺で、年久しく働く下僕の五助は、山で薪を取るうち、ときおり桃の林に行き着くことがあった。そこでは美しい衣の若い女たちが遊んでおり、中でも年長らしい婦人が世の中のことを尋ね、この桃を食べれば不老長生となるが林の外へ持ち出してはならぬと戒めて桃を与えた。人に話して嘲られた五助は、悔しさから戒めを破って桃を持ち帰り仲間にも食べさせたが、皆で連れ立っても林には行き着けなかった。旅の記し手が会った五助は六十余りだが顔色はたいそう若かったという。
原典より
五助も始めの程は其教を守りしに、後にフト過って其事を人に語りしかば、狐狸に馬糞類を與へられしならんと嘲けられ…—— 幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談)
『幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵』は、岡田蒼溟による霊怪の事例集である。祟る石、出雲の瀧姫行者、神西湖の妖怪、但馬の抜け首、黄金の精、海の牛鬼、天狗などの怪異を、著者自身の見聞や知人の談話、古い文書からの移載によって集め、明治・大正期の出雲や松江周辺の事例を多く含む。項目によっては【解題】や註を添え、事例の後に「第二編」と附録の「天狗考」を続け、巻末の「解説の欄」で生霊・疫神・物体の飛来などを心霊研究の立場から論じる。