山童の手伝いと約束を破った木樵の最期
どんな伝承か
伯耆の大山のふもとの村に、炭焼き用の木を伐る弥六という男がいた。ある日、谷で一人で働いていると、十三歳ほどの背丈で木の葉のようなものをまとった怪物が現れ、弁当の飯を半分くれれば仕事を手伝うと持ちかけた。仲間が次々に現れ、重い材木を崖の上へ投げ渡して運び上げたので、弥六は他言しない約束で契約した。ところが弁当が増えたことを妻に怪しまれ、事情を打ち明けてしまう。妻が山童を試す法を施した弁当を持たせた翌朝、弥六は首を抜かれ体を裂かれて死んでおり、伐った材木はすべて遺体の前の地面に切り口まで打ち込まれていたという。
原典より
然るに其夜に及んでも彌六が帰つて来ぬので、女房は案じて村人を狩り催して翌朝山へ分け入り、彌六の仕事場へ尋ねて行て見ると、実に意外にも彌六は首が抜かれ…—— 幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談)
『幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵』は、岡田蒼溟による霊怪の事例集である。祟る石、出雲の瀧姫行者、神西湖の妖怪、但馬の抜け首、黄金の精、海の牛鬼、天狗などの怪異を、著者自身の見聞や知人の談話、古い文書からの移載によって集め、明治・大正期の出雲や松江周辺の事例を多く含む。項目によっては【解題】や註を添え、事例の後に「第二編」と附録の「天狗考」を続け、巻末の「解説の欄」で生霊・疫神・物体の飛来などを心霊研究の立場から論じる。