落とし穴で人柱にされた下女乙女
どんな伝承か
今の乙女ヶ池のあたりは官有の田地で、そこを貫く大きな川が氾濫するたびに堤が切れ、郷民は夫役に苦しんでいた。その年も大出水で堤防が崩れて埋めきれず、あらゆる手を尽くしても失敗した。ついに女の人柱を立てようという話になったが、名乗り出る者はいない。工事の責任者だった本郷富長の庄屋戸野某は、自家の下女乙女を人柱にしようと決め、人夫に命じて堤の中央に穴を掘り木枠を入れ、上を覆って落とし穴を仕掛けた。何も知らぬ乙女は弁当を届けに来て穴を踏み、水中へ落ちて人柱となった。明治十九年の出水で田地は再び池と化し、郷人はこれを乙女ヶ池と呼ぶ。
原典より
<高木——「源助柱」「普門寺畔」 柳田——「綿打橋」>現在の乙女ヶ池付近一帯は、官有の田地であった。—— 日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第11巻』は、山陰の鳥取・島根両県の伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。矮姫による穀物の伝来、大山の山くらべ、伯耆の白兎、雲州皿屋敷、七尋女房、牛鬼、隠岐の後鳥羽上皇などを、伝承地を明記した口承の例話で示し、類話と近世以降の文献を添える。「文化叙事伝説」「自然説明伝説」の部に分けて話ごとに番号を付し、凡例のとおり例話・類話・文献・参考の順に並べ、多くの話に高木・柳田による伝説名を添える。