尾を見られて去った女化原の狐女房
どんな伝承か
常陸国稲敷郡の中央に、昔は根本の原と呼ばれ、いまは女化原と称する原野があり、その先に女化稲荷の祠がある。昔、土浦のあたりの栗山村の覚左エ門という男が、山で器量のよい女に出会って連れ帰り、妻にした。女は三人の子を産んだが、末の子が五、六歳になったころ、母がうたた寝をしている裾から狐の尾がのぞいていた。子が騒ぐと女は老狐となって姿を消し、翌日、縁側に「みどり児の母はと問はば女化の原に泣く泣く伏すと答へよ」という歌が残されていた。原に祠を建ててその狐を祀ったのが女化稲荷で、末子の竹松はのちに栗林下総守義長と名乗った軍略家だと『利根川図志』はいう。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
講座日本風俗史別巻 妖異風俗((講座日本風俗史 別巻)・日本風俗史・民俗)
『講座日本風俗史別巻 妖異風俗』は、『講座日本風俗史』の別巻として、複数の執筆者が妖しく異様な風俗を論じた巻である。淫祠と性の祭礼、戦後の新興宗教、性にまつわる迷信、妖術・忍術・奇術、憑きものと特殊家系、心霊術と催眠術、異類との婚姻、性と怪異の関わりを、古典の随筆や各地の報告、事件の記録から取り上げる。九つの章に分け、終章「日本妖異風土記」では関東から九州・沖縄までの怪異譚を地方別・県別に掲げる。