玉藻前の妖狐が化した那須野の殺生石
どんな伝承か
金毛九尾の妖狐は殷の紂王の妃妲己、天竺の斑足太子の妃華陽夫人となって国を乱し、吉備真備の帰国船に少女の姿でまぎれて日本に渡った。鳥羽天皇の御代には玉藻前として宮中に仕え、天皇が病むと、陰陽師阿部泰成の鏡に正体を映されて東へ逃れた。下野の那須野で領民が次々に消えたため、三浦介義純と上総介広常が大軍で那須野を囲み、矢と刀で討ち取ると、妖狐は赤黒い石となって毒気を吐き続けた。これが殺生石で、のちに源翁和尚が鉄槌で三度打つと毒霊は鎮まったという。筆者は毒気の正体を、あたりの噴気孔から出る硫化水素などの火山ガスと見ている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
講座日本風俗史別巻 妖異風俗((講座日本風俗史 別巻)・日本風俗史・民俗)
『講座日本風俗史別巻 妖異風俗』は、『講座日本風俗史』の別巻として、複数の執筆者が妖しく異様な風俗を論じた巻である。淫祠と性の祭礼、戦後の新興宗教、性にまつわる迷信、妖術・忍術・奇術、憑きものと特殊家系、心霊術と催眠術、異類との婚姻、性と怪異の関わりを、古典の随筆や各地の報告、事件の記録から取り上げる。九つの章に分け、終章「日本妖異風土記」では関東から九州・沖縄までの怪異譚を地方別・県別に掲げる。