伊勢一濱村の反響する巨岩
どんな伝承か
古くから各地に、夜泣石や同言石と呼ばれて霊怪視された石がある。伊勢国度会郡の一の瀬川の南にある南中一濱村には、高さ十丈ほどの青黒い大岩があり、そのそばで話をすると、岩の中に何者かが潜んでいるかのように、すぐに同じ言葉を返してくるという。ただしこの石は音楽には応じないとされる。著者は、こうした現象は本来学術で説明されるべき反響であるのに世の人が神聖視してきたのだと述べ、文明の光が多くの霊怪を消していった例として挙げている。
原典より
伊勢の國度會郡一の瀬川の南方、南中一濱村に高さ十丈ばかりな青黒い巖石があつて、其傍らにて話しすれば、巖石中に何物かざめる如く直ちに之に和して言ふのである。—— 心霊哲学の現状(高橋五郎・1919年(大正8年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊哲学の現状(高橋五郎・1919年(大正8年))
『心霊哲学の現状』は、高橋五郎が大正八年に著した心霊研究の概説書である。英国のロッジが戦死した子レイモンドの霊と交わした冥界通信をはじめ、欧米の交霊術と霊媒の実例を訳して紹介し、日本の催眠術と千里眼の流行、御船千鶴子・長尾郁子の事件、霊光や念写までを論じる。篇と章に分け、心霊哲学とキリスト教、クリスチャン・サイエンス、淘宮術との関係や、太霊道など国内の霊術諸派も取り上げ、ところどころに評註を添える。