昔話・狼報恩
どんな伝承か
上野原町棡原の井戸地区に伝わる。鉄砲撃ちの老人が玄関先で唸る大狼に近づくと、喉に魚の骨を刺して苦しんでいた。狩人といっても獲るばかりではない親切心から骨を抜いてやると、狼は喜んだような顔をして山へ帰っていった。老人は家に戻ってその話を妻に語ったが、翌朝玄関に出てみると大きな兎が置いてある。老人は昨日助けた狼が礼に持ってきた「狼の思返し」だと喜んで、その兎をいただいたという。狼は山の神の使いとして神聖視され、井戸地区でも随所で狼の御札を見ることができた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
井戸の民俗――山梨県北都留郡上野原町棡原(民俗調査報告 第6号・民俗調査報告)
『井戸の民俗――山梨県北都留郡上野原町棡原』は、棡原の井戸地区で行った民俗調査の報告で、書名によれば民俗調査報告の第六号にあたる。この写しには、長泉寺・観昌寺を『甲斐国誌』や『北都留郡誌』などの記録でたどる寺院の項と、クモ・夢見・イエギツネ・キツネ火などの俗信、民間療法を収める。口承文芸の章では、狼報恩などの昔話、親鸞上人の伝説、笑い話・なぞ・わらべうたを話者の名と生年を添えて掲げ、昔話と伝説には解説を付す。