親鸞上人の伝説――清水湧出
どんな伝承か
井戸地区の伝説。ある夕暮れ、一人の旅僧が一夜の宿を乞い、泊めると翌朝「ここは実に清浄な所だ」と言って向こうの堂に籠り、毎日行をした。婆さんが川で水を汲むのを見て「家の内に水の出る所はないものか」と捜し、「ここならきっと出る」と言うので爺さんが掘ると清水が湧いた。この水は家の入用の分しか出ず、体の不浄なときは女衆に汲ませぬよう戒められた。婆さんが忘れて汲むと水は止まり、坊さんに拝んでもらうとまた出たという。百ヶ日の行を終えた旅僧は七保地へ旅立ち、追いかけた婆さんの前かけに字を書いて姿を消した。後にこの名僧は親鸞上人と分かり、その沢はヅツと音がするので「ヅヅガ沢」と呼ばれるようになったという。
原典より
ある日の夕暮、一人の旅僧がやって来て、「一夜の旅を」とたのんだ。—— 井戸の民俗――山梨県北都留郡上野原町棡原(民俗調査報告 第6号・民俗調査報告) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
井戸の民俗――山梨県北都留郡上野原町棡原(民俗調査報告 第6号・民俗調査報告)
『井戸の民俗――山梨県北都留郡上野原町棡原』は、棡原の井戸地区で行った民俗調査の報告で、書名によれば民俗調査報告の第六号にあたる。この写しには、長泉寺・観昌寺を『甲斐国誌』や『北都留郡誌』などの記録でたどる寺院の項と、クモ・夢見・イエギツネ・キツネ火などの俗信、民間療法を収める。口承文芸の章では、狼報恩などの昔話、親鸞上人の伝説、笑い話・なぞ・わらべうたを話者の名と生年を添えて掲げ、昔話と伝説には解説を付す。