泥棒の船が覆り助かった二人の代参
どんな伝承か
貞享のころ、中谷の茂左衛門と立崎の五平治が成田講の代参に出かけた。ついでに、文間大明神の龍が天に昇って雨を降らせ、頭が龍角寺に、腹が龍腹寺に落ちたという伝説の二つの寺にも参るつもりだった。ところが龍腹寺で出会った泥棒に、川向こうが大火事だとだまされて急ぎ帰ることにした。ひどい南風で渡し船はどこも休み、そこへ泥棒たちが親切を装って船に乗せ、漕ぎ出すなり襲いかかった。二人が文間大明神を一心に念じて抗ううち船は転覆し、泥棒は皆溺れ死んだ。茂左衛門はマコモ、五平治はカヤにつかまって岸へ這い上がり、講金も無事だった。以来二人は秋のお衣替えの神事に、たいまつ用のカヤとマコモを欠かさず納めたという。
原典より
一方中谷の茂左衛門はマコモをつかんで布鎌岸にはいあがり、立崎の五平治はカヤをつかんで加納岸にはいあがった。—— 利根町史 第4巻(通史・民俗編)――民話と伝説(利根町(編)・利根町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
利根町史 第4巻(通史・民俗編)――民話と伝説(利根町(編)・利根町史)
『利根町史 第4巻(通史・民俗編)――民話と伝説』は、利根町が編んだ町史の一巻で、第一章を「民話と伝説」にあてる。町内を歩いて聞き集めた話と『北相馬郡志』などから引いた話を収め、大平権現や布川の地蔵の由来、バッソンの笑い話、大蛇・河童・むじなやキツネに化かされた話、押付新田の鶴殺し事件などを載せる。伝説と昔話に分けず文・布川・文間・東文間の地区ごとに節を立て、各話の題に伝承地を添え、話者名や方言の語釈を注記する。