白椿の梢で眠っていた子
どんな伝承か
赤岩に伝わる話。子どもが夕方に泣くと、カクレザトに隠されるから泣くものではないと叱られたという。大正五年の初秋、五歳の子がカクレザトに隠れたといって、くるわ中が大騒ぎになった。日が暮れても見つからず、総出で探しても行方が知れない。ところが樹齢三百年ほどの白椿のてっぺんでがさりと音がしたので、念のため登ってみると、枝の上でその子が眠っていた。本人もいつどうやって登ったのか覚えがなく、夢中で上っていたらしい。木の下は大勢が行き来したのに、こんもりした枝の陰で七、八尺の高さに隠れて見えなかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
千代田村の民俗――伝説・世間話(群馬県民俗調査報告書 第14集・群馬県民俗調査報告書)
『千代田村の民俗――伝説・世間話』は、利根川沿いの千代田村で行われた民俗調査の報告のうち、言語伝承の章を中心に収めたものである。赤岩・舞木・瀬戸井・福島などで聞いた長良神社や赤岩城、片目の白蛇、カクレザト、河童の伝説と、オトカや狐に化かされた話、大食・大力・変わり者の世間話、諺や洒落を、大字名を添えて短く記す。冒頭に正月の松飾りと大晦日の行事の断片を置き、言語伝承の「はじめに」に続けて伝説・昔話・諺洒落の三節を並べる。