大辻の裏で行く手をふさぐ大入道
どんな伝承か
八ツ屋のあたりではタヌキが化かすという話はあまり聞かれないが、西条では時おり出たらしい。西条と甚目寺のあいだは今でこそ県道で結ばれているが、昔は道らしい道もなかった。大辻の裏へ回ると、いきなり大入道が現れて行く手をふさぐことがあったという。丸坊主で、人の体より一回り大きい。「タヌキよ、かんべんしてくれ」と声をかけると姿を消した。とりたてて危害を加えるわけではないが、人々からは怖がられていた。八ツ屋では、新川で泳いでいるとトチに尻の栓を抜かれるとも言い、土用が明けたらトチが引くから川に入るなと戒めた。トチとはスッポンのことだという。
原典より
八ツ屋辺りではタヌキが化かすということはあまり聞かない。—— 大治町民俗誌 下――霊と神・怪異・俗信(大治町(編)・大治町民俗誌) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
大治町民俗誌 下――霊と神・怪異・俗信(大治町(編)・大治町民俗誌)
『大治町民俗誌 下――霊と神・怪異・俗信』は、名古屋に接する尾張の大治町の民俗誌の下巻から、信仰にかかわる節を収めたものである。辻の地蔵や秋葉・津島の小祠、荒神・井戸神などムラとイエの神、天王祭り・虫送り・雨乞いなどの祈願、キツネツキ・タヌキ・天狗の神隠し・火の玉・ナンドババアの怪異を、大字ごとの聞き書きで記す。第五節から第九節までで、予兆・禁忌・まじない・民間療法を挙げる俗信の節と、高度経済成長後の信仰の変化を述べる節で終わる。