役人群平に目を付けられた今小町お雪
どんな伝承か
鈴木景頼の死後まもなく徳川家康が天下を統一したが、長男佐十郎に主家再興の時機は来ず、開墾地を押付新田と名づけて心ならずも農に従っていた。その分家忠兵衛に、お雪という美しい娘があった。今小町と呼ばれる器量であったばかりに一家が打首の悲運を受けようとは知る由もなかった。ある日、二十一ほどのお雪が散歩に出て布川城の方を眺めていると、三十五、六の色の黒い大男が通りかかった。役人の群平である。一目で魂を奪われた群平は役人風を吹かせて家に上がり込み、茶を出せと命じた。父の忠兵衛は後の始末を恐れて酒肴でもてなしたが、気の勝ったお雪の頬には熱い涙が流れた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
相馬伝説集(寺田喜久(狂花)・相馬郷土研究・1922年(大正11年))
『相馬伝説集』は、寺田狂花が著し、大正十一年二月の自序を付した下総相馬地方の伝説集である。北相馬郡の小文間・布川・取手・守谷などを中心に、平将門や一色宮内にまつわる伝承、寺社の縁起、城址や墓碑、相馬霊場の札所を記し、猿島郡・結城郡・東葛飾郡などの伝説にも及ぶ。巻頭に緒言と坂巻湖舟の序・自序を置き、「△」を付けた小項目を土地ごとに並べ、『相馬日記』『下総旧事考』などの記事を引き、相馬の俗信も書き留めている。