泉に消えて金色の鯉になった少女
どんな伝承か
新座の北のはずれの中野には泉があちこちに湧き、それを集めた中野川が流れていた。昔、その泉のほとりによそから移ってきた親子が粗末な住まいを構え、父は竹細工を宿場で品物に換えて暮らしていたが、村人とは決して交わらず、十二、三歳の美しい娘にも村の者と遊ぶことを禁じていた。旧暦の盆、獅子舞の笛にひかれた娘は祭りの輪に入り、時を忘れて楽しんだが、帰ると父にひどく叱られて家に入れてもらえなかった。泣きながら熊野神社の祠のある泉まで来ると、熊野詣での姿の美しい比丘尼が水の上に現れて手招きし、娘は泉に入って中野川を流れ、姿を消した。翌年の獅子舞のころ、川に金色の大きな鯉が泳ぐのを見た村人が何人もいたという。
原典より
娘が泉の前にたたずんで泣いていると、熊野まいり姿の、美しい比丘尼が泉の上に現れて娘をまねいています。—— 新座市史 第4巻(民俗編)――伝説と昔話(新座市(編)・新座市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
新座市史 第4巻(民俗編)――伝説と昔話(新座市(編)・新座市史)
『新座市史 第4巻(民俗編)――伝説と昔話』は、新座市が編んだ市史の民俗編のうち、第四章「伝説と昔話」にあたる部分である。野火止の地名と在原業平の東下りを結ぶ伝説を『伊勢物語』や『新編武蔵風土記稿』などの記録とあわせてたどり、妙音沢・かしらなし・小僧ヶ淵・強清水などの場所をめぐる話、観音や地蔵の霊験・縁起の話を取り上げる。節ごとに解説を置き、『こども広報にいざ』などに載った再話や古老からの聞き書きを引く。