琴橋の淵の竜神が貸した膳椀
どんな伝承か
白砂川と吾妻川が落ち合う上手、吾妻川に架かるのが琴橋で、その橋のところの深い淵は底が竜宮に通じているといわれてきた。いつの頃からか村人は、冠婚葬祭で客用の膳椀が足りないとき、淵に棲む竜神から借りられるようになったという。借用の証文を書いて淵へ投げ入れると、渦に巻き込まれるや、琴橋の上に必要な数の膳椀が並んでいた。使い終えれば洗い清め、酒肴を添えて橋に並べ礼を述べて立ち去ると、膳椀は消えていたという。ところが欲深い男が借りたまま返さずにいたところ、物の怪に憑かれたように狂い死にし、同時に家から火が出て家人も什器も焼けた。以後は竜神が二度と貸さなくなったと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第4巻』は、日本の伝説を話型ごとに集成した叢書『日本伝説大系』の一冊である。茨城・栃木・群馬の三県に伝わる伝説を、男体・赤城の神争いや榛名湖の入水譚、平将門・源義家・親鸞・弘法大師などの事跡、河童・竜宮・長者・石・姥捨・九十九谷などの話型ごとに収める。各項は代表となる伝承地の話を掲げ、〔類話〕に各地の聞き書きを伝承者名や出典とともに並べ、〔文献〕に縁起・地誌などの古記録を抄出し、柳田・高木による話型名を添える。