鹿の尾に現れた観音と仇討ちの和解
どんな伝承か
愛知県丹羽郡扶桑町に伝わる観音霊験譚。昔、下野村羽根に住む寺沢増彦太夫金政は殺生ばかりして暮らしていた。ある年の三月十六日、狩りに出て栂野尾の峰で鹿を射止めると、倒れた鹿から光がさし、尾に一寸あまりの観世音菩薩が取りついていた。寺沢は深く後悔して殺生を断ち、この峰に御堂を建てると誓った。その帰り道、十七年前に紀州で父の平太を討たれた片岡源五郎が親の敵と斬りかかったが、刀は三つに折れて飛び散り、手足がすくんで動かない。観音の加護と知った源五郎は降参して寺沢と和解し、栂野尾の文字を継鹿尾と改め、ともに御堂の建立に力を尽くしたと伝えられている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。