火を逃れた聖天様と神代杉
どんな伝承か
真楽寺の境内に神代杉と呼ばれる杉の大木があり、大人が七人がかりでようやく抱えられるほどで、数十坪を覆っている。傍らの石碑には芭蕉の句が刻まれている。幹の西側の下方には黒く焦げた大きな空洞があり、地面から梢まで穴が抜けて空が見えるという。文化のころ真楽寺が大火に見舞われ、火は本堂から聖天堂へ及んだ。村人が聖天様を運び出そうと騒いだところ、杉の上から「俺はここにいる」と声がし、枝に跨がる姿があった。跨いだ側だけは火が回らず、いまの焦げた空洞が残ったのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。