盥で百夜通ったお満んと硫黄夜祭
どんな伝承か
樹下神社に伝わる硫黄夜祭の由来である。昔、湖西の比良村の相撲部屋に八紘山と名乗る力士がいた。湖東の鏡村で興行があった折、鏡村のお満んという娘が力士の容貌と力量に見とれて恋い慕う。八紘山は、それほど思うなら百夜の願をかけて成就すれば妻にしようと答えた。お満んは毎夜今浜の灯籠崎から盥に乗り、杓子で水を掻いて湖を渡った。驚いた八紘山は九十九夜目に灯明を消しておく。灯が見えず方角を失ったお満んは湖上をさまよい、暴風に盥は覆って沈んだ。この灯籠をお満ん灯籠という。数日やまぬ大風のなか、盥は蛇体となって今浜の岸へ吹き上げられ、村人が拾って硫黄を作ったと伝える。その霊を神社に祀ると風はやんだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第8巻』は、黄地百合子・酒向伸行・田中久夫が滋賀・京都・兵庫の三府県を分担して執筆し、福田晃がまとめた伝説集である。丹波の湖を神々が切り開いた国造りの話、神同士の争い、英雄や長者の盛衰、蛇と人の話、魚・鳥・石・塚・祠堂の由来などを、各地の口承や記載資料から集める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、高木敏雄・柳田国男の対応する話名を付す。