焰の中に僧形が見える油坊
どんな伝承か
近江野洲郡の欲賀という村では、春の終わりから夏にかけての夜に現れる怪火を油坊と呼んだ。焰の中にいくつもの僧の姿が見えるので、その名がついたのだという。昔、比叡山の僧で燈明の油を盗んだ者の亡霊がこの火になったと伝えられる。油を盗んだという話は怪火につきもので、河内枚岡の社に近い姥が火をはじめ、加賀の鳥越村の坊主火も、桝の隅に鬢付けを塗って油の目を盗んだ男の末路だと語られている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪談義(柳田國男選集 五巻)(柳田國男・柳田國男・妖怪学・1956年(昭和31年))
『妖怪談義(柳田國男選集 五巻)』は、柳田國男が妖怪についての論考を集め、昭和三十一年に自序を付して編んだ論集である。妖怪と幽霊の別を説く総論「妖怪談義」に始まり、川童・小豆洗い・ザシキワラシ・山姥・山男・大太法師・一つ目小僧・天狗などを、各地の言い伝えと方言の呼び名から考える。巻末に全国の妖怪の名を短い説明つきで集めた「妖怪名彙」を置き、大藤時彦の解説を付している。