山中に響く神楽の囃子
どんな伝承か
山の中で、夜更けにどこからともなく神楽の囃子が聞こえてくることがある。遠州の阿多古ではこれを山ばやしと呼び、狸の仕業だと決めていた。近くの熊村では昼のうちにも囃子が起こることがあって、狸が腹鼓を打っているところを実際に見たという者さえいたという。同じたぐいの音の怪は各地にあり、深夜に太鼓だけが響く狸囃子は東京の番町の七不思議にも数えられ、山中で聞こえるものは山かぐら、天狗囃子とも呼ばれた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪談義(柳田國男選集 五巻)(柳田國男・柳田國男・妖怪学・1956年(昭和31年))
『妖怪談義(柳田國男選集 五巻)』は、柳田國男が妖怪についての論考を集め、昭和三十一年に自序を付して編んだ論集である。妖怪と幽霊の別を説く総論「妖怪談義」に始まり、川童・小豆洗い・ザシキワラシ・山姥・山男・大太法師・一つ目小僧・天狗などを、各地の言い伝えと方言の呼び名から考える。巻末に全国の妖怪の名を短い説明つきで集めた「妖怪名彙」を置き、大藤時彦の解説を付している。