祠の前で見た白昼の星
どんな伝承か
下総北相馬郡布川の高台の東南麓にあった兄の家の庭で、十四歳の著者は一人で土いじりをしていた。庭には小さな石の祠があり、長命した先々代の老母の霊を祀るといい、こっそり戸を開けてみると径五寸ばかりの石の球が嵌め込まれていた。半月ほどのちのある春の日、その祠の前の土を掘っていると、二、三寸のところから寛永通宝の美しい孔あき銭が七、八箇出てきて、少年は言いようのない気持になった。その直後、しゃがんだまま首をねじ向けて澄みきった青空を見ると、日輪から十五度ほど離れたあたりに数十の昼の星が見えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪談義(柳田國男選集 五巻)(柳田國男・柳田國男・妖怪学・1956年(昭和31年))
『妖怪談義(柳田國男選集 五巻)』は、柳田國男が妖怪についての論考を集め、昭和三十一年に自序を付して編んだ論集である。妖怪と幽霊の別を説く総論「妖怪談義」に始まり、川童・小豆洗い・ザシキワラシ・山姥・山男・大太法師・一つ目小僧・天狗などを、各地の言い伝えと方言の呼び名から考える。巻末に全国の妖怪の名を短い説明つきで集めた「妖怪名彙」を置き、大藤時彦の解説を付している。