井川の山中に出る山神のチンコロ
どんな伝承か
信濃奇勝録には、八ヶ岳の麓の老木の洞に、猫の子ほどの大きさで鼬に似た山神の渦子(えのころ)という小獣が住むとあり、木曽でも山神のエノコロと呼んで、捕らえると山神の祟りがあると恐れた。駿河志料によると、安倍郡井川村の山中には、里人が山神のチンコロと呼ぶ怪獣がいる。鼠ほどの大きさで黒犬のような形をし、耳を垂れて尾を巻き、鳴き声も犬に似ている。ふだんは見えず、まれに見ると杣人は谷川で垢離を取り、山神の森に向かって山中の無事を祈った。多くは山神の森で見るのでこの名があるという。柳田は、遠州千頭の山鼬や紀州の雷獣クロンボウも同じ類ではないかと考える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪談義(柳田國男選集 五巻)(柳田國男・柳田國男・妖怪学・1956年(昭和31年))
『妖怪談義(柳田國男選集 五巻)』は、柳田國男が妖怪についての論考を集め、昭和三十一年に自序を付して編んだ論集である。妖怪と幽霊の別を説く総論「妖怪談義」に始まり、川童・小豆洗い・ザシキワラシ・山姥・山男・大太法師・一つ目小僧・天狗などを、各地の言い伝えと方言の呼び名から考える。巻末に全国の妖怪の名を短い説明つきで集めた「妖怪名彙」を置き、大藤時彦の解説を付している。