赤子を追って柳瀬川に沈んだ子守おえん
どんな伝承か
富士見市水子から志木へ入る所の柳瀬川に石橋が架かり、その場所をおえんが渕と呼ぶ。昔、志木宿の子守が赤ん坊をあやしているうち、誤って川へ落としてしまった。子守はすぐ川に飛び込んで助けようとしたが及ばず、赤ん坊もろとも渕に溺れて死んだ。子守の名はおえんといい、後の人はその責任感を称えて渕をおえんの渕と呼んだという。傍らには天明三年四月吉日の銘で石橋供養と刻み観音像を彫った石が一基あり、何かを語るかのようである。昭和五、六年ごろの柳瀬川改修で流れが東へ移され、この跡はわずかに残るだけになった。
原典より
水子から志木に入ろうとするところの柳瀬川に石橋がかかっている。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。