本川郷の山鬼(山デイ)
どんな伝承か
高知藩御山方の役人春木次郎八繁則が、宝暦元年に四十歳で土佐郡本川郷の山村に在役中の見聞を筆記した書物に次の記事がある。山鬼というものがあり、年七十ばかりの老人のようで人に似ており、眼一つ足一つ、蓑のような物を着ている。本川の人はこれを「山デイ」といい、俗にいう「山チチ」であろう。変化のものではなく獣の類だという。常には人に見えないが、大雪の時に足跡があり、人の往来する道を通る。六七尺に一足ずつ、丸く径四寸ばかりの、杵で押したような跡が飛び飛びに続く。越裏門村の忠右衛門という者の母は昼間これに行き逢い、すれ違って見返ると行方がなかったという。(寺川郷談)
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。