東田中の梛に生えた乳の瘤
どんな伝承か
駿東郡御殿場町の東田中に、梛の古木があった。枝のあちこちに瘤ができており、地上から数尺ほどの高さの正面には、女の乳首の形をしたふくらみがついている。乳の出ない産婦は乳の形をこしらえ、米を添えてこの木に祈り、その米を粥にして食べると、たちまち乳が出るようになるといわれた。源頼朝が富士の巻狩を催したとき、この木と隣の柳とのあいだに注連縄を張ったという言い伝えもある。
原典より
枝の處々に瘤を生じ、正面地上から數尺の處に婦人の乳頭形のものがある。—— 日本伝説名彙(柳田国男(指導)・日本放送協会(編)/関敬吾・石原美子(編纂)・1949年(昭和24年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説名彙(柳田国男(指導)・日本放送協会(編)/関敬吾・石原美子(編纂)・1949年(昭和24年))
『日本伝説名彙』は、柳田國男の指導のもとに日本放送協会が昭和二十四年に編んだ伝説の名彙である。全国の伝説を、その拠り所となる木・石・岩・橋・清水・淵・塚・坂・屋敷・地蔵などの地物の名ごとに集め、伝わる県郡村名を付して、郡誌・市町村誌や伝説集、民間伝承誌などの出典を括弧で示す。冒頭に柳田の「傳説のこと」を置き、木・石岩・水・塚・坂峠・祠堂の部に分けて、巻末に資料の解説と種類別索引を付す。