琵琶湖から山へ登る伊吹明神
どんな伝承か
享保八年九月二十五日の夜、近江の伊吹山のふもとが急な大雨で震動し、雨がやむと、ふもとの原から大入道のようなものが現れた。その左右には松明のような火が一列に並び、伊吹山へ登っていった。村人は地震ではないから外へ出るなと声をかけ合ってその様子を眺めていたが、やがてすべて消えた。土地の古老によれば、こうしたことは五、六年に一度あり、伊吹の明神が琵琶湖から現れて山へ登られるのだという。翌日見ると、湖岸から山上までおよそ二里にわたり、幅三間ほどの一筋が田畑も草木も焼けて焦げ土になっていた。
原典より
翌日に見ると、湖岸から山上まで約二里のところ、田島草木幅三間ばかり一筋道に焼けて焦土となつて居た。—— 幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談)
『幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵』は、岡田蒼溟による霊怪の事例集である。祟る石、出雲の瀧姫行者、神西湖の妖怪、但馬の抜け首、黄金の精、海の牛鬼、天狗などの怪異を、著者自身の見聞や知人の談話、古い文書からの移載によって集め、明治・大正期の出雲や松江周辺の事例を多く含む。項目によっては【解題】や註を添え、事例の後に「第二編」と附録の「天狗考」を続け、巻末の「解説の欄」で生霊・疫神・物体の飛来などを心霊研究の立場から論じる。