貯水池まで乗せた娘の消失
どんな伝承か
昭和五十七、八年ごろ、西多摩郡瑞穂町の箱根ケ崎あたりで、自動車事故で亡くなった娘の幽霊が出るという話が広まった。娘は夜になると道端に立っていて、通りかかったタクシーを止めて乗り込む。行き先を尋ねると、貯水池まで連れて行ってほしいと答える。ところが貯水池に着いて運転手が振り返ると、いつの間にか姿は消えていて、車内には誰もいない。噂は騒ぎになり、人々は夕飯を早めに済ませて見物に出かけたが、亡霊を見た者はいなかった。おかげで近くの畑が踏み荒らされて困ったと語られている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
所沢市史 民俗編(所沢市史・昭和中期(推定))
本書は埼玉県所沢市の民俗編として、明治から昭和戦中にかけて市内に伝承された怪談や民間信仰を記録した資料である。主な内容は、家に棲み着くヘビ、仏様が姿を変えた霊的存在、天狗やカッパなどの妖怪に関する伝承、雷獣などの民俗的存在が多く、これらは子供のしつけや禁忌事項として語り継がれていた。記録された話の多くは目撃者からの伝聞であり、所沢市内の実在する地名(北秋津、南永井、久米、本郷など)と結びついた地域固有の民間信仰を示している。