神崎沖で森が入れ替わる生船の怪
どんな伝承か
明治三十年の夏、生魚を運ぶ汽船銚子丸が夜十時ごろ港を出て利根川を遡り、千葉県神崎沖にさしかかると深い霧に包まれた。左岸に見えたはずの神崎の森が、いつの間にか右側に見えるという現象が何度も繰り返され、船長ともども背筋が寒くなり、その夜は停泊して夜明けを待った。朝になると舵のそばに古い供養塔が一本建っており、汽船の就航で仕事を奪われ身投げした高瀬舟の夫婦の供養塔と判明。あらためて弔うと、以後は怪異が止んだという。
原典より
亀崎の沖では、十月の中旬から鰯が取れる、その頃になると浜は賑わって、五時頃から九時頃まで、毎日二回は網を引く。—— 現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。