神崎沖
どんな伝承か
明治三十年の夏、生魚を運ぶ汽船銚子丸が夜十時ごろ港を出て利根川を遡り、千葉県神崎沖にさしかかると深い霧に包まれた。左岸に見えたはずの神崎の森が、いつの間にか右側に見えるという現象が何度も繰り返され、船長ともども背筋が寒くなり、その夜は停泊して夜明けを待った。朝になると舵のそばに古い供養塔が一本建っており、汽船の就航で仕事を奪われ身投げした高瀬舟の夫婦の供養塔と判明。あらためて弔うと、以後は怪異が止んだという。
原典より
亀崎の沖では、十月の中旬から鰯が取れる、その頃になると浜は賑わって、五時頃から九時頃まで、毎日二回は網を引く。—— 現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和〜平成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和〜平成)
松谷みよ子『現代民話考 ― 偽汽車』を小話単位で全525話収録。汽車・船・自動車などの乗り物にまつわる現代の民話・怪談を全国から採集。狐狸が汽車に化ける偽汽車、船幽霊、タクシーに乗る幽霊などを地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明496話・市区町村判明359話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。