藁束を担いで寄り合い船に潜り込んだ娘
どんな伝承か
愛媛県南宇和郡御荘町長崎での、大正十四年頃の話である。明治四十三年生まれの語り手の母が十二歳の頃、小学校を卒業すると紡績工場や商店の下働き、子守などに就職する時代であった。母はミシンの縫い目の美しさが気に入り、ミシン会社に入りたいと思っていたが両親が反対した。ある日こっそり馬屋の二階から藁束を二束かついで御荘町の長崎まで行き、寄り合い船の船底に入れてもらって宇和島まで渡った。宇和島でその藁を売り、ミシン会社で座り込みをして雇ってもらい、洋裁師になったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。