羽越水害の跡に立つ濡れた女の客
どんな伝承か
昭和四十二年八月十七日、新潟県北蒲原郡黒川村を含む流域で羽越大水害が起き、土石流によって多くの人命が失われ、流域のほとんどが埋まった。人々は県道沿いに移転し、復興のためダンプやトラックが行き来するようになった。その頃から幽霊の噂が立ちはじめる。女を乗せてやると、必ず水害以前は集落があった人家のない場所で「ここで降ろして下さい」と言い、車を止めると姿が消えて座席がびしょびしょに濡れている、バックミラーに映らないので振り向くといない、というのである。運転手たちは人を乗せなくなった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。