線路に立つ影と偽の機関車
どんな伝承か
陸羽東線が大正七年に開通して間もない頃のこと。富沢駅、現在の赤倉駅から県境の堺田へは上り一方で、途中いくつものトンネルをくぐる。その辺りでは夕暮れ時に線路を歩く人かげや、じっと立ちつくす人かげが見え、汽車はしばしば急ブレーキをかけて止まった。機関手が降りると影はふと立ち消える。やがて狐狸の悪戯と決めつけて止めなくなったある夕方、向こうから機関車が煙を吐いてやってきた。汽笛を続けざまに鳴らして制動したが間に合わず衝突した。ところが衝撃はなく、前を見れば機関車の影もない。何かを轢いた感触があり、堺田駅から連絡して探させると、鉄路にまたがった大きな古狸が血まみれで死んでいた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和〜平成)
松谷みよ子『現代民話考 ― 偽汽車』を小話単位で全525話収録。汽車・船・自動車などの乗り物にまつわる現代の民話・怪談を全国から採集。狐狸が汽車に化ける偽汽車、船幽霊、タクシーに乗る幽霊などを地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明496話・市区町村判明359話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。