自転車の前輪に現れた童の霊
どんな伝承か
喜如嘉の墓地の傍を走る国道での出来事である。語り手の父は戦前、自転車屋をしていた。語り手が七歳位のとき、父の自転車の後ろの荷台に乗って行く途中だった。もう夕暮れ時で、墓道は薄暗くなんとなく寂しかった。すると、本当に小さい童ん子が、前輪の前から巻き込まれそうになりながら歩いている。危ないよと大声で言っても、父にはちっとも見えないという。語り手には裸になった小さな男童がはっきり見えた。後で聞くと、そこの海側に昔、風葬跡のような墓地があり、そこは「ワラビ墓」だったという。昭和二、三年頃の話である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。