入谷で消える電車の美女と濡れた座席
どんな伝承か
七十歳ほどの画家の宮崎さんが見たという幽霊の話。平塚から帰る夜の電車に、ひときわ美しい女が座っていたが、入谷という所まで来るといつの間にか姿がない。それが三晩続いたので、宮崎さんはこれはただごとではないと思い、次に見かけたら声をかけようと決めた。三日目か四日目、やはり女がいたので席を立って近づこうとすると、なぜかつまずいて転んだ。はっとして見るともう女はおらず、その席へ行ってみるとシートが濡れていたという。戦前の出来事だと語られている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。