三本辻へ送り出した憑きもの
どんな伝承か
有馬でのこと。ある人に憑きものがついた。当人は腹へ火箸を突き刺し、これで出入口ができたと喜ぶ。膏薬を貼ってやれば、そこが出入口だといって剥がしてしまう。油揚げの寿司など好きな物をねだるので家族が用意すると、隠れて口にした。戸の隙間からうかがえば、覗かれていては食べないと言い、人目のあるうちは箸をつけない。困った家族が出て行ってもらおうと三本辻にごちそうを並べて送り出したところ、憑きものは長らく世話になったと礼を述べて去ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
渋川市誌 民俗編(市史編纂シリーズ)
『渋川市誌 民俗編』は、渋川市の市誌民俗編のうち、第六章「民俗信仰」の第一節から第五節の初めまでを収めたものである。人魂・幽霊・ロクロッ首・生まれかわり・死神などの霊魂の話、手をつけてはいけない聖地や耕すと祟る忌地、オサキ使いや狐つき、神かくし、若宮八幡などのたたり、イチッコと呼ばれる巫女や祈禱師、東向き鳥居参りなどの祈願を、市内の大字ごとの聞き書きで記す。はじめにで章全体を解説し、続く節では話に見出しと採集地の大字を添える。