傘を貸し金を隠した豪商綿貫家の口碑
どんな伝承か
入間川の宿にあった豪商綿貫家をめぐる口碑の数々。上州新田郡綿貫の出で、米問屋から始めてみそや酒造りも手がけ、江戸の神田に多くの出店を持ち、老中や旗本に大金を貸したと伝えられる。明和三年の一揆の際には四つの井戸に金銀を隠し、家財を沢の天岑寺に預け、無事だった礼に結界石を奉納したという。屋号を「山下」といい、山下大尽とも呼ばれ、市役所前の山下通りや成円寺へ上る山下坂に名を残す。夕立になれば誰にでも傘を貸し、町中が綿貫の番傘で埋まったという話や、飯能騒動の一揆勢に酒と握り飯をふるまって宿場を守った話、徳林寺のあたりにあった屋敷から稲荷さまへ通じるぬけ穴の話などが語り継がれている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
狭山市史 民俗編(狭山市(狭山市史編さん室/民俗調査担当))
『狭山市史 民俗編』は、狭山市の市史のうち民俗を扱う巻で、ここにはその「五 伝説・昔話・世間話」の部分が収められている。堀兼・入間・奥富・柏原・水富・入間川の各地区で古老の座談会と個別の聞き取りによって集めた話を、話者の地区・名・生年を添えて載せ、不老川や堀兼の井、影隠地蔵、キツネ、豪商綿貫家の話などを含む。伝説は水・動物・植物・地名・人物・塚・神仏・地蔵・妖怪変化など十項に分け、話ごとに[解説]を付す。