荒神左近に殺された金売吉次の墓
どんな伝承か
金売吉次は平安末期に栄えた奥州平泉の豪商であった。奥州の砂金を都へ運んだが、その途中で一度も強盗や賊に襲われたことがない。いつも莫大な利を得て帰るので、吉次の名は奥州はもとより天下に轟いていた。吉次は天下の情勢に通じ、その頃の夜盗山賊の様子を探って、勢力に応じて進物を送っていたので、襲う賊もなかったという。奥州藤原氏の栄華も、砂金の富ばかりでなく、この吉次による都への販路があったからだとされる。その吉次の墓が下総にあるのは不思議のようだが、「佐倉風土記」には、金売橘次信高ら兄弟三人が奥羽を往来する途次、萩原村の強盗荒神左近に殺されて貨を奪われ、墓は水に噛まれたが土地の人はなお跡を記す、とある。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 下総の巻(藤澤衛彦・日本伝説叢書・1919年(大正8年))
『日本伝説叢書 下総の巻』は、藤澤衛彦が編著し、大正七年の緒言と大正八年の序を添えた下総国の伝説集である。平将門・佐倉宗吾・真間の手児奈・累などを中心に、千葉県と茨城県西部にまたがる旧下総の城跡・寺社・墓・橋・井戸などにまつわる伝説を、地誌や古記録の引用を交えて収める。緒言で百七十九編を収めると述べ、国名の由来から始めて、話ごとに所在の町村名を付した見出しを立てて並べる。