恋人を待ち続けた娘の魂を留めた君待橋
どんな伝承か
千葉町猪鼻の下、寒川の長洲のあたりに架かる小さな橋を君待橋と呼ぶ。口碑では、まだこの辺りが密林で人家もまれだった頃、里の娘が恋人の訪れをいつもこの橋で待っていたが、ある雨の夕暮れに恋人が橋を踏み外して水に落ちた。娘は橋のたもとで待ち続け、悲しみのあまり荒れた波の中へさまよい出て溺れてしまう。残された夫は救えなかったことを嘆き、若い妻の魂を橋の名にとどめたのが君待橋の由来だという。別の説では、頼朝が常胤に迎えられた折にこの橋の名を尋ね、東六郎大胤が歌で答えたことに因むといい、また西行が陸奥へ行脚の途中に橋の名を聞いて歌を詠んだとも伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 下総の巻(藤澤衛彦・日本伝説叢書・1919年(大正8年))
『日本伝説叢書 下総の巻』は、藤澤衛彦が編著し、大正七年の緒言と大正八年の序を添えた下総国の伝説集である。平将門・佐倉宗吾・真間の手児奈・累などを中心に、千葉県と茨城県西部にまたがる旧下総の城跡・寺社・墓・橋・井戸などにまつわる伝説を、地誌や古記録の引用を交えて収める。緒言で百七十九編を収めると述べ、国名の由来から始めて、話ごとに所在の町村名を付した見出しを立てて並べる。