蛇を殺した報いの木曾谷大洪水
どんな伝承か
大正十二年七月二十四日、木曾谷を襲った大洪水でもっとも被害の凄惨だったのは大桑村であった。洪水や山崩れの起こる五、六日前、大同電気の工事で村に入っていた朝鮮人労働者の一団が、崖の中腹の穴に群れていた蛇を面白半分に殺して谷へ投げ捨てた。その夜、村のある者の夢に龍神が現れ、蛇を殺した報いとして二十四日までに村を谷底に沈めると告げた。村人たちは驚き、盛大な蛇祭りを行ったが龍神の怒りは解けず、大桑村はほとんど壊滅した。蛇を殺した朝鮮人三十八人も全員行方不明になったという。村を流れる伊奈川の上流には、今も龍神が棲んでいると古老は語り伝えている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。