銃剣刺殺の跡に現れる白衣の人影
どんな伝承か
昭和八年九月ごろ、佐倉連隊にいた松島吉雄の談として伝わる話。暴風雨の日に連隊が習志野へ野営に出て兵営が手薄になった翌日、不寝当番の兵が、夜中に白い法衣の坊主が衛生司令部の方から来て本丸の林へ消えたと言い、歩哨に立った上等兵も火薬庫のそばで白衣の者を見たと話した。数日後の二十一日夜、松島は連隊付属の衛戍病院の屍室で不寝番に立った。一時過ぎ、落ち葉を踏む足音が近づき、屍室の窓の外に青白い顔の白衣の人影がはっきり見えた。誰何すると人影は本丸寄りの闇へ消えた。揺れる自分の影は蝋燭と霧のせいとしても、白衣の姿は説明がつかなかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。