三保の松に掛けた羽衣と漁師の妻になった天女
どんな伝承か
『本朝神社考』に引く『駿河国風土記』逸文によると、昔、天から神女が降りて羽衣を松の枝に干していた。漁師が拾って見ると、言いようもなく軽く柔らかい。神女が返してくれと乞うても漁師は与えず、天に帰れない神女はやむなく漁師と夫婦になった。のちのある日、女は羽衣を取り戻して雲に乗って去り、漁師もまた仙人になったという。林羅山は、北に富士、南に大海を望み、幾千万の松が茂る三保の松原を天女の遊ぶにふさわしい地と讃えた。『東海道名所記』は、梢の高い一本の羽衣の松に羽衣を掛けた天女が漁師の妻となり、夫の留守に羽衣を取って飛び去ったと伝えている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
講座日本風俗史別巻 妖異風俗((講座日本風俗史 別巻)・日本風俗史・民俗)
『講座日本風俗史別巻 妖異風俗』は、『講座日本風俗史』の別巻として、複数の執筆者が妖しく異様な風俗を論じた巻である。淫祠と性の祭礼、戦後の新興宗教、性にまつわる迷信、妖術・忍術・奇術、憑きものと特殊家系、心霊術と催眠術、異類との婚姻、性と怪異の関わりを、古典の随筆や各地の報告、事件の記録から取り上げる。九つの章に分け、終章「日本妖異風土記」では関東から九州・沖縄までの怪異譚を地方別・県別に掲げる。